阿Qは黙って身を後ろに引こうとした時、趙太爺は早くも飛びかかって、ぴしゃりと一つ呉れた。
「お前は、どうして趙という姓がわかった。どこからその姓を分けた」
 阿Qは彼が趙姓である確証を弁解もせずに、ただ手を以て左の頬を撫でながら村役人と一緒に退出した。外へ出るとまた村役人から一通りお小言をきいて、二百文の酒手を出して村役人にお詫びをした。この話を聴いた者は皆言った。阿Qは実に出鱈目な奴だ。自分で擲られるようなことを仕出かしたんだ。彼は趙だか何だか知れたもんじゃない。よし本当に趙であっても、趙太爺がここにいる以上は、そんなたわごとを言ってはけしからん。それからというものは彼の名氏を持ち出す者が無くなって、阿Qは遂に何姓であるか、突きとめることが出来なかった。

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